葬儀社ビジネス

高齢者ビジネスの中でも一番最後のビジネスになるのが葬儀です。
最近の葬儀業界の動向や、需要の高まっている葬儀について紹介していきます。

団塊の世代の2040年問題

団塊世代とは、戦後1947年~1949年頃までに生まれた、現在70代の方のことを指します。この前後の年に生まれた人数に比べ、突出して出生率が多いことが由来で団塊世代と言われるようになりました。
団塊世代の方達のおかげで経済成長を促進できたと言っても過言ではありませんが、この世代が2025年には後期高齢者に突入します。その後の2040年ごろには、平均寿命を越えた超高齢化社会になっていくことが予想されているのです。
そのため、老衰で亡くなる方や病死される方が増え、病院や介護施設がパンクしてしまう可能性があります。「死に場所難民」や「認知症パンデミック」、「高齢者の孤独死」などの問題のことを「2040年問題」と呼ばれるようになりました。

事前葬儀相談を受ける人が増える

団塊世代の2040年問題を踏まえて、今後の高齢者の行動を考えていくと、死に場所を事前に探す人が増えると予想されます。体調が悪くなってから入院したくても入院ができなくなったり、介護が必要になってから施設を探しても入居できる場所がなかったりするでしょう。団塊世代が80代くらいになる頃の子孫は50~60代になっているので、自宅での介護を求めても「老老介護」になります。満足な介護を受けられない可能性も高くなっているのが現状です。
問題となるのは介護だけではありません。葬儀についても考えておかないと、突然の訃報でも葬儀ができなかったり、火葬待ちになったりすることも想定されます。昨今のコロナウイルスの影響で、葬儀社業界の縮小や減少していく予想もあるほどです。葬儀自体の簡素化により葬儀社への影響は大きくなっています。
そんな中で売上アップを図るために、団塊世代の事前相談や事前予約を獲得していく動きを始めました。

生前葬

葬儀社の対応で増えてきているのが生前葬です。自身の葬儀を自ら執り行い、親族や知人へ日頃の感謝を伝えます。生前葬は、葬儀場で行なうのではなく、ホテルの宴会場を利用するのが特徴です。葬儀とは異なり自由に取り決められるので、生前葬を行いたい高齢者に人気が高まっています。
生前葬で行われた内容の一例を紹介しましょう。

  1. スピーチ
  2. 乾杯
  3. 歓談
  4. 会食
  5. プレゼント贈呈
  6. アルバムスライドショー
  7. 音楽の生演奏
  8. カラオケ大会
  9. ビンゴや余興

葬儀というより、結婚披露宴のような内容にして楽しめる会にされることが多いようです。生前葬が行われても、亡くなった後は身内だけの葬儀を行います。直葬の形で、死亡宣告後に火葬場へ遺体を搬送し、火葬のみで故人を弔うという流れです。

生前葬の費用事例

大阪で執り行われた生前葬では近親者のみで行われ、約10名が参加しました。この場合、約57万円で生前告別式を葬儀場にて執り行い、その後別の会場で食事会を行っています。(謝礼や飲食代は別途必要です)
他にも、無宗教の生前葬では同じ10名の参列者の儀式を125万円ほどで執り行った実績もあります。

会場のサイズや招待客の人数、執り行う儀式や企画で金額に差が出ます。返礼品や記念品、会食内容のグレードによってもピンキリになっているため、オプション次第で高額になることも。葬儀社の提案力や対応力で売り上げに差が出てくるでしょう。

生前葬を安心して執り行うための3つのポイント

生前葬を行う時に確認されるポイントとして、

  1. 式場や会館をもっているか
  2. 実績があるか
  3. 会計が明朗であるか

といった点を重要視されます。
生前葬で必要になるホテルの宴会場と提携しているかなども確認されることが多いので、葬儀社ビジネスを興す場合は調整しておきましょう。
また、生前葬の実績があると安心してもらえます。生前葬をしたいと考えていても企画案が浮かばない方も多いようです。そういった方に、過去に執り行った葬儀の事例を紹介できると信頼に繋がります。対応したことがあるからこそしっかりとしたサポートができるので、実績を増やしておくといいでしょう。
3つ目の明朗会計かどうかについては、スタッフの対応力も必要です。希望に沿った内容を詳細に確認し、一つひとつの説明を丁寧に行うことが求められます。見積もり書を提示して説明をきっちり行うことで、執り行いたい方の不安を取り除けるでしょう。

生前予約

生前予約は、亡くなった後の葬儀について、事前に相談したり予約したりすることです。

メリット

  • 葬儀の内容を自分で決められる
  • 任せられる人がいない、身寄りがない不安を解消できる
  • 費用を把握することで事前準備できる
  • 残された家族の負担を軽減できる

自分の葬儀を自分でコーディネートできるというところがポイントです。葬儀の種類や祭壇の装飾、通夜振る舞いや返礼品など、細部にまで希望に合わせられます。
身寄りがない方や、家族に任せられる人がいない場合でも、事前に予約や支払いを済ませておけば、死後どうなるのかわからないという不安を解消できます。
亡くなった後の葬儀の準備は、残された家族に負担をかけてしまいますが、生前予約を済ませておくことで、遺族の精神的な負担やストレスを抑えられます。団塊世代の抱える悩みを解消して、契約数を増やしていくことが大切です。

デメリット

  • 生前予約していることを遺族が認知していないと執り行えない
  • 希望している内容が遺族に反対される
  • 葬儀社の倒産時に前払い費用が返ってこない

葬儀社と本人のみでの相談する場合、遺族が関知しておらず訃報の際に予約した葬儀社へ連絡しないという可能性があります。生前予約の場合は本人から遺族への伝達を行ってもらい、取りこぼさない対策が必要です。また、自由葬や直葬などを希望される場合、遺族から反対されてしまうというトラブルになる可能性があります。一般葬や家族葬であればトラブルになりにくいですが、独特な葬儀を執り行いたい場合は、注意しましょう。
葬儀社の倒産で、事前予約で支払った前払い費用が返せないというトラブルもあります。生前予約の場合は葬儀費用信託を利用して、金融機関や弁護士に預けてもらうという方法もありますのでチェックしておきましょう。

葬儀信託

葬儀信託とは

葬儀信託は、金融機関と提携している葬儀社に費用を預けて依託管理するシステムです。
身寄りの少ない方や遺族に負担をかけたくない方が亡くなった際に、葬儀費用を登録口座から支払ってもらえます。葬儀以外にもお墓や相続関連の時でも活用されることがあるため、事前予約の際に契約される方が多い商品です。
もあい型と呼ばれる葬儀信託もあり、毎月固定で支払うことで葬儀費を貯めていくという方法もあります。

葬儀信託のメリット

  • 葬儀費用を自動で支払ってくれるため、金銭的な負担や手間が省ける
  • 金融機関が管理するので葬儀社の経営状況に左右されない
  • 血縁者がいなくても友人や弁護士を喪主にして葬儀を執り行える

生前予約だけでは心配になる部分を、葬儀信託では全てサポートできます。葬儀のトラブルも減らせるので、遺族と葬儀社側のどちらにもプラスになります。

仕組み

葬儀社で葬儀の相談や打ち合わせや契約をした時に、葬儀費用を提携している金融機関へ預けます。契約の際に、喪主候補の方を選定しておき、ご本人が亡くなった際に喪主候補の方から連絡が入ります。契約した内容通り葬儀を執り行い、金融機関から葬儀社へ費用が支払われるという仕組みです。金融機関で管理してもらえるので、万が一葬儀社が倒産しても金融機関から信託を返還できます。

葬儀社ビジネスの今後

コロナウイルスの影響でダメージを受けている葬儀社もありますが、団塊世代の2040年問題を目前に、大きなビジネスチャンスになる可能性もあります。
これからは、時代に合わせた葬儀の形や、備える方法など多方面からサポートできる企業が生き残っていくでしょう。今後の葬儀ビジネスから目が離せません。