高齢者のこころについて
年を重ねると、論理的に考えるよりも、直感や印象によって判断することが多くなってきます。
反応の素早さや問題処理能力といった「流動性知識」は低下する一方、知識や理念といった「結晶性知識」は保たれているのが特徴です。
この結晶性知識というのは「吾輩は猫であるを書いた作者は誰か?」「税金を払わないといけないのはなぜか」というような質問を指します。
また、高齢者とのコミュニケーションに共通するのが、会話の流暢さが低下することです。
話をスムーズに進められず、内容から話がそれたり飛躍したりします。
本人は話したくても「言葉が思い出せない・言葉が出ない」といった現象が現れます。
このような場合、周囲は本人の気持ちとは別の話題を話すことがあったり、話を急かしたりすることがあるかもしれません。
ですが、周囲の対応としては、話が脱線してもゆっくり話を聞くことが重要です。
ご本人が分かりやすいよう、話す内容を一つに絞り、使い慣れた言葉で話しましょう。
高齢者のうつの症状について
一般的な老化現象とうつ病は異なるものですが、見落としてしまうこともあるので注意が必要です。
典型的な症状が現れる方は1/3から1/4しかいないといわれており、症状の一部だけが強く現れたり、あるいは弱くなったりするケースも多くみられます。
うつの症状としては、好きなことに対しての意欲や集中力が低下し、精神運動の遅延が目立つようになります。
気分の低下をはじめ健康状態が悪く、頭が痛い・お腹が痛いというように、心気的な訴えが多くなるケースも。
「ものおぼえが悪くなる」「物忘れが増えた」というような記憶力の衰えは、老化ではなくうつ病に関わっている可能性があるので注意が必要です。
高齢者のうつ病の要因
うつ病の誘因は「ライフイベント」と「慢性的なストレス」の2種類に分類されます。
配偶者や家族との死別・離婚や、患っている病気、家族や友人とのいざこざや住み慣れた家を離れることなどが、ライフイベントの例として挙げられます。
病気にかかっている人や身体機能障害がある人の介護をされている方も、うつ病になりやすいといわれているので、ちょっとした言動・行動で気づけるようにしましょう。
また、周囲の人と信頼関係を築くのが難しい方は、人間関係に影響が生じ、老年期に孤立しやすくなるため、うつ病に陥るリスクが高い傾向にあります。
うつ病高齢者患者への社会支援
うつ病の方にとって社会ネットワークの存在はとても重要です。
うつ病患者を支援するさまざまなサービスがありますが、そのサービスの内容に注視するだけでなく、本人が「支援を受けている」と実感できるかどうかがポイントです。
数時間かけてお話をする訪問を数回行うよりも、短時間でも頻繁に声をかけられたほうが、気にかけてもらっている実感がわきます。
「何を話そう」と構えるのではなく、世間話をしたり困っていることがないかを聞いてみてください。
ただし、親しくなりすぎると精神的な悩みを相談される場合もあるため、悩みを聞いてもらえる相談窓口があることを伝えておくと、本人も安心するでしょう。